あそこの研修がブラックな理由
はじめに
ブラックな研修ってありますよね。
例を挙げれば
こういうのって、どっかで見たことありますよね?
CBS 7 Marine Boot Camp, San Diego California, July ...
「サーイエッサー」
そう軍隊です。
どちらも効率的にトレーニングするなら、怒鳴る必要ないんじゃないの?
「人間なんだから言えば分かるよ。ディズニー的に育ててよ。」
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とか思いますよね。
便利なアイデンティティ
そうしない理由は一つ”アイデンティティを付与”しているからです
人間が意思決定をするには政治学者のJames.G.Marchによると二つの理由があります。
Primer on Decision Making: How Decisions Happen
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一つは限定合理性に基づいたもの、平たく言えば利益を求めるものです。
これは言わずもがなですよね。
そしてもう一つはアイデンティティです。
よくいるじゃないですか、「だって私こういう人だから」って言う人。
言われるとイラっとして &!%”&#(! してやろうかと思うんですけど
これ彼によると真っ当な理由です。
なにかしようと思うと意思決定者は次の三つの質問をするそうです。
1 What kind of situation is this?
(どんな状況だ?)
2 what kind of person am I ? or what kind of organiztion is this?
(自分はどんなやつだ?組織ならどんな組織だ?)
3 What does a person such as I, or an organization as this, do in a situation such as this?
(そんな人や組織ならこの状況で何をするんだ?)
つまり、特定のアイデンティティさえ与えられれば、
この3つの質問を基に期待どおりに動いてくれるんですよね。
これって経営側としてはすごい便利です。
だって利益の有無で意思決定しないってことは、給料は低くたっていいんですし、
与えたアイデンティティの範囲で自分なりに考えて行動してくれるんですから。
もちろん細かいオペレーションはトレーニングしないとできるようになりませんけど。
ちなみにプラトンも著書「国家」の中で人間の行動の動機について、
欲望、理性、気概っていう風に言ってますけど、この気概っていうのがアイデンティティ≒なん
じゃねと私は思っています。(異論は認めます)
なぜ怒鳴る?
それじゃ、なんであんなやり方なのかと言えば、
あれはイニシエーション(通過儀礼)だからです。
イニシエーションとは宗教学者の島田裕巳の著書「私の宗教入門」によると
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2種類あって、
子供から大人になったものを社会的に承認するもの
と
新しい資格を持った人間になることを承認するもの
があるそうです。
研修でやってるのは後者です。
それで、イニシエーションは文化人類学者のジェネップによると
分離、移行、統合の3ステップによって構成されているそうです。
分離・移行・統合に関して経済小説作家の橘玲さんのポストによいものがあったので引用します。
”分離とは、相手を日常生活から完全に隔離すること。捕虜収容所や軍隊の新兵訓練所、オウム真理教のサティアンなどがこれにあたる。捕虜は名前を奪わ れて番号やホーリーネームで呼ばれ、私物はすべて取り上げられ、現実世界との交流を絶たれ、逃げ出す術がないことを思い知らされる。
移行では、自意識や自尊心を破壊し、セルフコントロールを失わせて精神的に不安定な状態(変成意識状態)に誘導する。いわゆる、「頭がからっぽにな る」ことだ。極端な不眠や絶食をさせたり、罵詈雑言を浴びせたり、意味不明のマントラを何十時間も唱えつづけさせることで、意識を人為的に不安定にし、追 いつめていく。
統合とは、宙ぶらりんになった自己を“正しい”場所に着地させることだ。教義や思想を徹底して教え込んだあと、壁を打ち壊すような体験(イニシエーション)をさせる”
(自己啓発の歴史(5) 洗脳と超越 | 橘玲 公式サイト http://www.tachibana-akira.com/2013/02/5567)
このプロセスはどうも上記の2つの動画に一致しそうな内容ですよね。
超ブラックなプロセスですけど、これによって新たなアインデンティティを付与できるんですから、
メソッド的には正しいですよね。
最後に
研修でアイデンティティを付与すると、立派な社員として行動してくれるようになるので、昔ながらのイニシエーションを実施してるということです。
まあこんな会社気持ち悪いなと思うんですが、
経営系の名著であるジム・コリンズの「ビジョナリーカンパニー」によると、
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いい会社っていうのはカルトっぽい文化を持っているなんて言われているので、
あながちこういうブラックな研修が悪いとも断罪できないのかもしれませんが、
まあ、こういうところで仕事をするのは一生避けておきたいところです。
ところで参考文献的にアマゾンから張り付けていたら非常にアフリエイト色満載になったんです
けど、狙ってはいないです。
以上、駄文失礼しました。